日本の木造建築は、多雨多湿で温暖な気象条件のもとで、台風や地震などの自然災害が原因となって破損が進みやすい状況にあります。特に、屋根や軒周り、外壁、縁廻り、床下などは特に傷みが早いため、放置すると建物の一部が壊れるだけでなく破損が建物全体に及ぶことになります。また、木造以外の建築物でも、長年の経年によって腐朽したり破損したりします。
このため、文化遺産としての文化財建造物を将来に確実に維持し、継承していくためには、定期的な修理を欠くことができません。
文化財建造物の保存修理は一般的な建築物の建築や修理と異なり、(1)綿密な調査研究と確実な資料に基づく修理を実施すること、(2)技法の継承・活用と古材の再利用を確実に行うこと、(3)修理の内容や明らかになった技法を綴めた記録の作成を行うことが、特に重要です。
木造の文化財建造物は、建築されて以来、何度も修理されつつ今日まで保存されてきています。これらの建造物は、日本の伝統的な建築技法によって建て直されたり、修理されてきています。
このような日本の貴重な文化遺産を維持保存していくためには、伝統的な技法を身につけている職人も必要ですが、貴重な文化財の価値を損なわないよう、文化財建造物に関する知識をもとに、保存修理の基本的な方向性や考え方を策定し、文化財保護の観点から工事を完遂させる技術者が必要となります。
このような文化財建造物の設計監理を行う技術者は、文化財建造物の保存修理に関する特別な知識と継承されてきた技法に熟知し、さらに保存修理工事に携わった豊富な経験を有する者でなければなりません。
宮城県 大崎八幡宮
岐阜県 武並神社本殿
熊本県 太田家住宅
山形県 旧県庁舎