工事進捗情報 2014.01.31
名称 | 諸戸家住宅 |
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指定区分・年 |
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所在地 | 三重県桑名市太一丸18番地 |
所有者 | 財団法人 諸戸会 |
諸戸氏庭園には、現在6棟の建物(主屋・広間・玄関及び座敷・洋館・玉突場・表門)が、初代諸戸清六の精神を伝える貴重な遺産として、国重要文化財指定を受けています。
公益財団法人諸戸財団は、この文化財を健全な状態で後世に残していくため、平成20年に調査工事を始めました。2年間の調査の後、平成22年より修理事業に着手し、完成を目指して取り組んで、います。
今回のような本格的な修理は初めてのことであり、建物の解体作業を通じて、これまで、はわからなかった建築の過程が明らかになってきました。
陛目すべきは、明治という自由な気風を受けた清六の大胆な発想力と意志の強さ、そして職人たちの卓越した技術と知恵でありましょう。
動乱の時代の気瞬に満ちた仕事を目の当たりにし、建築の表側からだけでは見えないその部分を修理事業の内容とともにお伝えしていきたいと考えています。
玉突場解体工事(平成20年度)
洋小屋という外国で使われる屋根構造をもちます。この解体により、玉突場の窓枠の木材が非常に複雑に組まれていることなど、外観からはわからない部分にも注意が払われていることがわかりました。
表門曳家(ひきや)(平成22年度)
表門は、工事車両の搬入路を確保するため、もとの位置より20mほど、西へ移動しました。
発掘調査
発掘調査によって広聞の土台下にあたる部分から深さ1.8mの堅固かつ整然と積まれた石積みが確認されました。この石積みは広聞を建築する際、地盤が弱いことを考慮し、地盤改良の工法として土地造成の段階から計画的に行ったものと思われます。これは全国的に見てもめずらしい試みです。
そこまでしたにもかかわらず地盤が傾き、建物にひずみが生じてしまっていました。今回の修理では液状化を防止するため地盤改良杭を施し、不同沈下を防止するため50cmの厚みのコンクリートのベタ基礎をつくりました。
洋館解体(平成22年度)
洋館の解体に伴い、現在の壁紙の後ろから当初の壁紙の一部が発見されました。また、外壁にも塗り直しのあとが見られ、これまでに何度も補修がされていることがわかりました。
広間揚家(あげや)(平成23年度)
諸戸家の土地は、元々田んぼであり、海・川に近いため、軟弱でした。それを補うため、建物が建った120年前には、土地全体を作り直すとともに、柱下には大きな石を何段にも積み重ねる石積みを施す、という非常に大規模な地盤改良を行いました。
揚家準備中
揚家後
このような油圧ジャッキを使って持ち上げていきます。
このように列ごとに1cm ずつ持ち上げる作業を200回繰り返して2m揚げます。建物が傾かないようにゆっくりと揚げていきます。
広間半解体過程(平成24年度)
部材を傷めないように注意しながら、瓦・葺土・野地(のじ)を取り外していきました。
解体前
瓦取り外し中
瓦の下には全面に土があります。これが瓦との接着剤のような役割をはたします。
その下には土がこぼれ落ちないようにするための杉皮が敷かれ、
野小舞(のごまい)とよばれる薄い板があり、
それらを野垂木(のだるき)という細い棒が支えます。